行動解析ソフトの選び方と比較|ANY-maze・EthoVision XT・フリーソフトなど10製品【マウス・ラット】

この記事で扱うのは、マウスやラットなど実験動物の行動を、動画やセンサーから数値にするための行動解析ソフトです(Web の閲覧行動や人の動きの解析は扱いません)。国内で入手または問い合わせができ、げっ歯類の行動を数値にする製品から、手作業での行動の記録に使うソフトも含めて10製品を選び、何ができるかと価格の条件を比べました。

選ぶときの軸は、位置追跡・フリージング判定・姿勢推定・行動分類・外部機器の制御の5つです。他社製品については、各社の公式ページ、国内の取扱元、配布元、論文をもとに、2026年10月3日時点の情報で書いています。

なお、この記事を掲載しているのはクラウド型の行動解析ソフト「Be-Chase」の運営元です。Be-Chaseの説明は後半の節に分け、比較表では他の製品と同じ項目で並べています。


行動解析とは

この記事でいう行動解析は、実験動物の行動を観察・記録して、移動距離・滞在時間・行動の回数や持続時間などの数値にし、薬や遺伝子の操作、飼育の条件などが行動にどう影響するかを調べる研究の手法です。神経科学・薬理学・毒性の研究などで、オープンフィールド試験や高架式十字迷路のような行動試験と組み合わせて使われます。Web サイトのアクセス解析や、心理学・療育の応用行動分析(ABA)も「行動解析」と呼ばれることがありますが、別の分野です。

こうした指標は目視とストップウォッチでも記録できますが、動画の本数が多いと時間がかかり、記録する人によって値がずれることもあります。行動解析ソフトは、動画やセンサーから動物の位置や動きを取り出し、決めた定義のとおりに数えます(DeepLabCut のように座標を出すところまでで、指標の計算は利用者が行うソフトもあります)。


行動解析ソフトの選び方:目的別の候補

まず、何を測りたいかで候補を絞れます。

やりたいこと候補になる製品
移動距離・エリアの滞在時間・進入回数を出す位置追跡とエリアの集計の機能がある製品なら出せます(DeepLabCut は座標から自分で計算します)。研究室にライセンスがあれば、EthoVision XT や ANY-maze で録画済みの動画を解析すれば足ります。無料で済ませるなら行動解析君(Windows)、インストールを避けるならクラウド型の Be-Chase
恐怖条件付けのフリージングを測る位置の不動とは別にフリージングを判定できる製品(EthoVision XT、ANY-maze など)。閾値と最小持続時間は目視と照らし合わせて決めます
鼻先・尾の付け根など部位の座標を取るDeepLabCut(無料)、EthoVision XT、ANY-maze(頭と尾の追跡)
毛づくろい・立ち上がりなどを自動で分類するEthoVision XT の行動の自動認識、PhenoScan(HomeCageScan など)。部位の座標だけでは分類までは出ません
動物の位置に合わせて音・光・刺激を出すANY-maze、EthoVision XT(外部機器の制御)
照明や毛色に左右されにくい運動量の測定赤外線センサー方式の SCANET(メルクエスト)
人の目で行動を記録し、回数と時間を集計するBECO2(Q’sfix)

行動解析ソフト10製品の比較表

価格は、各社が公式ページに出している情報だけを載せました。掲載がないものは「要見積」としています。

製品(開発元/国内窓口)方式公式に挙げられている主な用途価格の目安と条件必要な環境
EthoVision XT 19(Noldus/ソフィア・サイエンティフィック)動画追跡。鼻先・体の中心・尾の付け根の追跡、行動の自動認識移動・ゾーン・不動・社会的接触など要見積(公式はパッケージ制で、ソフトの価格は非掲載)Windows 11 Pro。深層学習の機能に NVIDIA の GPU
ANY-maze(Stoelting/室町機械)動画追跡。体の中心・頭・尾の追跡オープンフィールド・迷路・新奇物体認識・恐怖条件付けなどFull licence 1,698,000円(日本から見た公式価格ページの表示。永続ライセンス。税・送料の扱いは記載なし)Windows(国内代理店の推奨は Windows 11 以降・64bit)
SCANET(メルクエスト)赤外線センサー(装置一体)運動量・強制水泳・明暗箱など要見積専用装置と Windows PC
PhenoScan(CleverSys/プライムテック)動画から行動を分類ホームケージの行動・オープンフィールド・迷路・社会性・フリージングなど要見積(フルライセンスと年次ライセンス)Windows PC とカメラ
Ginger2D(ライブラリー)汎用の動作解析動物・人・機械の動きの軌跡要見積Windows 11・メモリ16GB。カメラとのセット
BECO2(Q’sfix)人がキーを押して行動を記録行動の回数・持続時間の記録要見積公式ページに記載なし
行動解析君動画追跡(位置)とフリージングの解析オープンフィールド・3チャンバー・明暗選択・EPM・恐怖条件付けなど無料Windows。動画は AVI(Xvid)のみ
DeepLabCut(オープンソース)深層学習による姿勢推定部位の座標が要る実験全般無料(ラベル付けと学習の作業は別にかかる)Windows・Mac・Linux、Python 3.10〜3.12。GPU を推奨
DuoMouse(国立遺伝学研究所)2匹の位置追跡2匹の社会行動(自動推定は現在停止)無料(非商用に限る)Windows 版と Adobe AIR 版
Be-Chase(運営元:当社)動画追跡(体の中心)・クラウドオープンフィールド・EPM・停止・回転などFree ¥0/Small 1か月 ¥2,800/Standard 1か月 ¥30,000(いずれも税別)ブラウザ。MP4・MOV・AVI など

永続ライセンスとクラウドの料金は、そのままでは比べられません。永続ライセンスは初期費用が大きい代わりに使う期間の制限がなく、クラウドは契約期間と解析できる時間で費用が決まります。比べるなら、同じ年数・同じ解析量で総額を出してください。為替や構成を含めた費用の考え方は「マウス・ラット行動解析ソフトの価格比較」で詳しく扱っています。


選ぶときは5つの機能を分けて考える

行動解析ソフトの機能は、互いに独立した5つの軸に分けて見ると整理しやすくなります。体の中心の1点しか追わないソフトでも外部機器を制御できるものがありますし、部位の座標が取れても行動の分類まではしてくれないことがあります。自分の実験に要る軸を先に決めてから、製品を絞ってください。

軸何が得られるか主な製品
位置追跡動物の位置から、移動距離・速度・エリアの滞在時間・進入回数BECO2 を除く9製品(DeepLabCut は座標を出すまでで、指標は自分で計算。SCANET は動画でなくセンサーで位置を捉える)
フリージング判定呼吸以外の動きがない時間EthoVision XT、ANY-maze、PhenoScan(FreezeScan)、行動解析君(FreezeAnalyzer)
姿勢推定鼻先・頭・尾の付け根など、複数の部位の座標DeepLabCut、EthoVision XT、ANY-maze
行動分類毛づくろい・立ち上がり・嗅ぎなどの行動のラベルEthoVision XT、PhenoScan、BECO2(人が判定して記録)
外部機器の制御位置や行動に応じた音・光・刺激・給餌ANY-maze、EthoVision XT

特に注意したいのはフリージングです。その場にとどまっていること(不動)と、呼吸以外に体が動いていないこと(フリージング)は同じではありません。ANY-maze は両者を別の判定として扱っています。EthoVision XT のマニュアルは、画素の変化(Activity)や検出した体の形の変化(Mobility)が閾値を下回った状態を不動として数える方法を説明しており、恐怖条件付けのフリージングもこの方法で測るよう案内しています(XT 18 のマニュアル。XT 19 のマニュアルでの記載は未確認)。体の中心の位置だけで判定すると、その場での毛づくろいや首振りもフリージングに数えやすくなります。


AI(深層学習)を使う解析・使わない解析の違い

動画から動物の位置や部位を取り出す代表的な方法は、大きく2つに分かれます(センサーで位置を捉える装置や、人の目による記録は別です)。どちらが優れているかは一概に言えず、測りたい指標と、準備にかけられる手間で選びます。

深層学習を使わない方式深層学習を使う方式
動物の見つけ方動物のいない背景の画像との明るさや色の差から、動物の領域を取り出す人が点を付けた画像で学習したモデルが、部位の位置を推定する
得られるもの動物の領域と、その中心点の位置鼻先・耳・尾の付け根など、自分で決めた部位の座標
解析の前の準備背景・検出の条件・区画の設定。ラベル付けは要らないラベル付けと学習、学習したモデルの精度の確認(学習済みモデルがそのまま使える場合を除く)
計算機一般的な PC やクラウド学習には GPU があると速く進む
精度が落ちやすい場面背景と動物のコントラストが低い、影や反射、照明の変化、動物どうしの重なり学習に使った動画と照明・カメラ・視点が違う動画、ラベルの付け方がぶれた場合
主なツール行動解析君の Tracker、ezTrack の位置追跡、Be-Chase(当社)などDeepLabCut、SLEAP、EthoVision XT の深層学習を使う機能など

移動距離、区画の滞在時間と進入回数のように、体の中心の1点で定義できる指標なら、深層学習を使わない方式で出せます。新奇物体認識の探索(頭が物体を向いているか)や、高架式十字迷路の四肢基準の進入、毛づくろいなどの姿勢で定義する指標には、部位の座標を取れる方法(深層学習による部位の推定や、頭と尾を追跡できる製品の機能など)が要ります。どちらの方式でも、背景と動物のコントラストがはっきりした撮影は精度を上げます。

深層学習を使う方式では、学習に使った動画の条件や、モデルの版と評価の結果も、解析の条件として記録しておきます。姿勢推定の代表的な無料ソフトの比べ方は「DeepLabCut と SLEAP の違い」で扱っています。


試験別に決めておく指標の定義

同じ「進入回数」でも、体のどの点が境界を越えたら進入とするかで数値が変わります。論文の方法に合わせて、解析の前に定義を決めておきます。

試験解析の前に決めること必要な軸
オープンフィールド中心区画の大きさ(全体の何%か)、移動距離の平滑化位置追跡
高架式十字迷路(EPM)進入の基準。「四肢すべてが入ったら進入」とする定義は、体の中心の1点だけでは再現できない位置追跡(四肢基準なら姿勢推定)
Y迷路アームへの進入の基準と、自発的交替率の数え方(連続した3回の進入で3本のアームがそろった回数 ÷(総進入回数 − 2)× 100(%))位置追跡(アームへの進入の順番)
新奇物体認識探索の判定。頭が物体の近くにあり物体を向いていること、物体に乗っている時間を除くか姿勢推定(頭部)
恐怖条件付けフリージングの閾値と最小持続時間(何秒以上の静止をフリージングとするか)フリージング判定
2匹の社会行動接触・接近の距離と向き、個体の取り違えの直し方姿勢推定と個体の識別

体の中心の1点だけで解析すると、新奇物体認識は「物体の近くにいた時間」に近い値になり、EPM では境界付近の細かな出入りで進入回数が増えることがあります。オープンフィールドと EPM の指標の定義と測り方は、「オープンフィールド試験の解析方法」と「高架式十字迷路試験の解析方法」で詳しく扱っています。


ANY-maze と EthoVision XT の違い

どちらも汎用の動画追跡ソフトで、録画済みの動画の解析にも、撮影しながらの追跡にも使えます。大きな違いは、機能の組み方と価格の出し方です。

機能の組み方 ANY-maze の Full licence は、1つのライセンスにすべての機能が入り、追加のモジュールがない構成です。頭と尾の追跡も含まれます。EthoVision XT は、XT 19 から Essential・Advanced・Premium の3つのパッケージに整理されました(それまでは本体に機能のモジュールを足していく構成でした)。どの機能がどのパッケージに入るかは、見積の際に確かめてください。

フリージング ANY-maze は、その場にとどまる不動(immobility)と、呼吸以外に動かないフリージング(freezing)を別に判定します。EthoVision XT は、画素の変化(Activity)か、検出した体の形の変化(Mobility)が閾値を下回った状態を不動として数え、フリージングもこの方法で測るよう案内しています(XT 18 のマニュアル。XT 19 のマニュアルでの記載は未確認)。マニュアルではケーブルを付けた動物には体の形の変化(Mobility)を勧めています。

価格 ANY-maze は公式の価格ページに金額を出しています。日本から閲覧すると Full licence が 1,698,000円の永続ライセンスと表示され、アップデートとサポートが期限なしで付くとされています。EthoVision XT は、公式ページにソフトの価格を出しておらず、見積になります。

1ライセンスで使える PC ANY-maze の公式 FAQ では、1ライセンスで有効にできるのは1台分です。ただし、追跡には使わず結果の解析だけをする PC には、ライセンスなしで台数の制限なく入れられるとされています。

国内の窓口 ANY-maze は室町機械(日本総代理店)、EthoVision XT はソフィア・サイエンティフィックです。

ソフトを途中で替える場合は、過去のデータと同じ動画を両方で解析し、数値が並ぶかを確かめてください(後述の Lim ら 2023 のとおり、同じ動画でもソフトで数値が変わることがあります)。


商用の行動解析ソフト

EthoVision XT

オランダの Noldus 社の動画追跡ソフトで、最新版は XT 19 です(公式ページ)。XT 19 では、校正用のカードを映すだけで実寸の縮尺を合わせる機能や、社会的接触・接近・追従・離脱を数える変数が加わりました。公式の動作要件は Windows 11 Pro で、深層学習を使う機能には NVIDIA の GPU が要ります(PC の最低要件として、メモリ32GB と RTX 4060 相当の GPU が挙げられています)。全機能を14日間試せる試用版があります。

ANY-maze

米国 Stoelting 社の動画追跡ソフトで、国内では室町機械が日本総代理店として扱っています(公式ページ)。オープンフィールド・水迷路・Y迷路・十字迷路・恐怖条件付け・新奇物体認識などに使われ、mp4・wmv・avi などの動画を後から解析できます。専用のインターフェース(AMi)を使うと、スピーカー・給餌器・刺激装置などを動物の位置に合わせて制御できます。室町機械は、Windows 11 以降(64bit)・メモリ16GB 以上の PC を推奨しています。

SCANET(メルクエスト)

富山のメルクエストの行動解析装置で(製品ページ)、高密度に配置した赤外線センサーで動物の位置を捉えます。動画を使わないため、照明や毛色の影響を受けにくいのが特徴です。運動量と軌跡・立ち上がり、強制水泳、明暗箱の測定が基本で、場所嗜好性(CPP)などのモードがオプションで用意されています。同社には、動画方式でY迷路・物体認識などに対応する MAZER もあります。

PhenoScan(CleverSys/プライムテック)

側面から撮ったホームケージの動画から行動を自動で分類する HomeCageScan が特徴のソフト群です(国内の取扱元のページ)。上から撮る TopScan(オープンフィールド・物体・迷路・水迷路)、社会行動の SocialScan、強制水泳・尾懸垂の DepressionScan、FreezeScan、歩行解析などがあります。国内の取扱元のページでは、録画済み動画の解析に MPEG-1・MPEG-2 形式を読み込めると書かれており、MP4 をそのまま読めるかの記載はありません。手元の動画の形式は事前に問い合わせて確かめてください。ライセンスには、初年度のバージョンアップが付くフルライセンスと、1年単位の年次ライセンスがあります。

Ginger2D(ライブラリー)

動物・人・機械の動きを追う汎用の動作解析ソフトで(製品ページ)、軌跡のデータを CSV で保存し、Excel に出力できます。ソフトとカメラ一式を組み合わせたシステムで、計測周期の60〜500Hz は、カメラを含むシステムの仕様として書かれています。動作環境は Windows 11・メモリ16GB です。行動試験向けの指標(中心区画の滞在時間やアームへの進入回数など)がどこまであるかは、用途を伝えて確かめるのが確実です。

BECO2(Q’sfix)

動画を見ながら行動ごとのキーを押し、行動の生起と持続時間を記録するソフトです(製品ページ)。行動のカテゴリを最大160まで設定でき、評定者の間の一致(カッパ係数)も出せます。動物を自動で追跡する機能はなく、人の判定を効率よく記録するための道具です。価格と対応 OS は公式ページに記載がありません。


行動解析フリーソフトの候補と制約

無料のソフトの中にも、位置の追跡や部位の座標の推定ができるものがあります。ただし、動く OS、読める動画の形式、導入の手間に制約があります。ここでは比較表に入れた3本の要点だけを挙げます。ToxTrac や SLEAP なども含めた無料ソフトの詳しい比較は「行動解析フリーソフトの比較」にまとめています。

行動解析君

Windows で動く無料のソフト一式で(配布元のページ)、位置を追跡する Tracker、フリージングを解析する FreezeAnalyzer、キー入力で目視の記録をとる BinTimer、複数の USB カメラから録画する AviRecorder が入っています。Tracker は最大11のエリアを設定でき、移動距離・エリアの滞在時間・座標を CSV で出力し、時間の区切り(Bin)ごとの集計も出せます。配布元は、オープンフィールド・3チャンバー社会性試験・明暗選択・高架式十字迷路・恐怖条件付けなどでの利用を挙げています。

一方で、Tracker が読めるのは AVI 形式の動画だけで、Xvid のコーデックが要ります。MP4 で撮った動画は変換してから読み込みます。移動距離の単位はピクセルで、cm への換算は自分で行います。Vector の掲載ページの動作 OS は Windows 10/8/7 で、Windows 11 での動作は書かれていません。最新版は1.02(2026年5月)です。

DeepLabCut

深層学習で、鼻先・耳・尾の付け根など、自分で決めた部位の座標を推定するオープンソースのソフトです(インストールの公式文書)。出力は全フレーム・全部位の座標と信頼度で、移動距離や滞在時間、行動の分類は自分で計算します。動作環境は Windows・Mac・Linux と Python 3.10〜3.12 です。GPU は推奨で、必須ではありません。ラベル付けやプロジェクトの管理は CPU で足り、学習も CPU で回せますが、大幅に遅くなります。Apple シリコンの Mac では Metal 経由で GPU が使われ、手元に GPU がなければ Google Colab も使えます。

ソフト代は0円でも、ラベル付け・学習・評価・学習のやり直しと、座標を指標に変えるスクリプトを書く時間がかかります。できることの全体像は「DeepLabCutとは」、インストールから座標の出力までの手順は「DeepLabCutの使い方」で扱っています。

DuoMouse

国立遺伝学研究所などのグループが開発した(Tanave ら、2014年)、2匹のマウスの社会行動を調べるソフトです。最新版は1.43(2018年)で、配布元の Zenodo には、セキュリティ上の理由でサーバーに接続できず、社会行動の自動推定は現在動かないと書かれています。いま使えるのは2匹の位置データの取得までで、時系列の解析は自分で行います。読める動画は FLV と MJPEG 形式の AVI です。新しく導入するなら、2匹以上の部位の追跡には DeepLabCut の複数個体の機能や SLEAP が候補になります。


導入前に自分の動画で確かめること

撮影条件

背景と動物の明るさの差で位置を見つける方式のソフトでは、カメラを固定して真上から撮り、照明を均一にし、床の照り返しや壁の影を避け、毛色と逆の色の床を使うのが基本です。フレームレートは試験の途中で変えず、アリーナの実寸を使ってピクセルを cm に換算します。

同じ動画でもソフトで数値が変わる

Lim らは、オープンフィールド試験の録画を ANY-maze(6.3)と EthoVision XT(11.5)の両方で追跡し、結果を比べました(文献 1)。照度2条件(58 lux と 295 lux)と、毛色の異なる3系統(黒の C57BL/6J、CD1、C3H/HeN)を使っています。差は主に移動距離などの探索量に出て、壁際の区画の滞在時間のような指標では小さくなりました。差の大きさは毛色と背景のコントラストで変わり、照度によらず黒いマウスで最も大きくなっています。多くの指標で EthoVision XT の測定値の方が高く出ましたが、この比較からどちらが正しいかまでは言えません。

これは特定の版と施設での一例です。ただ、ソフトの違いも結果のばらつきの原因になりうることを示しています。

試用で確かめる項目

  • 明暗・毛色・ケーブル・巣材などで見えにくい場面を含む動画を数本選び、目視の結果と比べる
  • 見失ったフレームの割合、座標の飛び、エリアへの進入やフリージングの判定が目視と合うかを確かめる
  • 論文の方法の欄に書けるよう、ソフト名と版、カメラと fps、縮尺の校正、閾値、平滑化、欠測の扱い、エリアの定義を記録しておく

手元の動画が自動の追跡に向くかは、動画適性チェッカーでも確かめられます(登録不要・無料)。


価格表に載らない費用

PC 据え置き型の行動解析ソフトの多くは Windows で動きます。Mac が中心の研究室では、解析用の Windows PC が別に要ります。深層学習の機能を使うなら、GPU を積んだ PC も必要です。

作業時間 DeepLabCut のような無料のソフトでも、ラベル付けと学習、座標を指標に変える作業は人の時間として残ります。

カメラ・照明・装置 装置一体型の製品や外部機器を制御する構成では、カメラ、インターフェース、設置の費用が別にかかることがあります。

為替と保守 海外製品の見積は為替で変わります。保守の契約の有無で新しい版や新しい OS への対応版を受け取れるかが変わる製品もあるため、保守の条件は見積の際に確かめてください。

データの扱い 動画をクラウドに上げるサービスを使う場合は、所属機関の情報管理の規程と、保存期間・削除の方法を確かめてください。


Be-Chaseでできること・できないこと

この記事を掲載しているのは Be-Chaseの運営元です。以下は自社サービスの説明にあたります。

Be-Chaseは、ブラウザから動画を上げて解析するクラウド型の行動解析ソフトです。動物の体の輪郭の重心(中心点)を1点として追跡し、総移動距離、エリアごとの滞在時間と進入回数、停止の時間と回数、回転、ヒートマップ、滞在場所の偏り(ジニ係数)を CSV と画像で返します。速度は、速さを色で示した軌跡の画像で確かめます。MP4・MOV・AVI などの動画に対応し、インストールや GPU は要りません。

プラン料金(税別)解析できる時間期間
Free¥0合計20分(1本10分まで)アカウント発行から14日間
Small¥2,800/1か月(都度購入)60分契約開始日から1か月
Standard¥30,000/1か月(都度購入)900分1か月。6か月 ¥150,000(期間内の合計5,400分)・年間 ¥240,000(期間内の合計10,800分)もある

解析時間は、動画の長さではなく、動画の中でターゲット(動物)を検出できた時間で数えます。1年続けて使うなら、Standard の年間プラン(¥240,000・税別)が、永続ライセンスと比べるときの目安になります。

次の用途には向きません。

  • 鼻先・尾の付け根など、部位の座標が要る試験(新奇物体認識の探索の判定、EPM の四肢基準での進入や head dipping)
  • 呼吸以外の動きがないことで判定する、厳密なフリージングの測定。Be-Chaseの停止は、中心点が、ターゲットを囲む枠の長い辺の半分を半径とする円の中に2秒以上とどまったかで判定します。体の動きは見ないため、その場での毛づくろいや首振りも停止に数えることがあります。現在提供中のプランでは、この条件は変えられません
  • Y迷路の自発的交替率の自動計算。アームを区画として設定すれば、区画への出入りが時刻順に CSV に出るので、進入の順番から交替率を数えることはできます(Freeプランでは出入りの記録は最初の3行まで)
  • 行動の分類(毛づくろい・立ち上がりなど)、外部機器の制御、撮影しながらのリアルタイム追跡
  • インターネットに接続できない環境での解析

よくあるご質問では、動画・解析結果・保存した設定を、ご契約の終了から30日後に(それまでに次のご契約がなければ)サーバーから削除すると定めています。期間中もマイページから削除できます。アップロードした元の動画はダウンロードできないため、原本は手元に保管してください。データは国内のサーバーで管理しています。


まとめ

  • 行動解析ソフトは、位置追跡・フリージング判定・姿勢推定・行動分類・外部機器の制御の5つの軸で、自分の実験に要る機能を先に決めてから選ぶ
  • 移動距離・滞在時間・進入回数だけなら、位置追跡とエリアの集計の機能がある製品で出せる。フリージング、部位の座標、行動の分類、機器の制御が要るかで候補が絞られる
  • ANY-maze の Full licence は全機能込みの永続ライセンスで、価格を公開している。EthoVision XT はパッケージ制で、価格は見積
  • 無料のソフトは、OS・動画の形式・導入の手間に制約がある。DeepLabCut はソフト代が0円でも作業時間がかかる
  • 同じ動画でもソフトで数値が変わることがある。導入前に、自分の動画を目視と比べて確かめる

抜けている製品、古くなった情報、事実と異なる記述があれば、お問い合わせからお知らせください。確かめたうえで直します。


参考文献

  1. Lim, C. J. M., Platt, B., Janhunen, S. K. & Riedel, G. Comparison of automated video tracking systems in the open field test: ANY-Maze versus EthoVision XT. J Neurosci Methods 397, 109940 (2023). https://doi.org/10.1016/j.jneumeth.2023.109940

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Freeプランでは、クレジットカードの登録なしで分析機能を試せます(画像に透かしが入る、CSV で区画への出入りなどの出来事を1件ずつ並べる部分は、それぞれ最初の3行までなどの制限があります)。

  • 撮影した動画がある方:動画適性チェッカーで、解析に向いた撮影条件かを先に確かめられます(登録不要・無料)。
  • これから試す方:無料でBe-Chaseを試す(Freeプランの期間と解析できる時間は料金表をご覧ください)。
  • すでにお使いの方:設定の手順はマニュアルにまとめています。

ご不明な点はよくあるご質問、またはお問い合わせからどうぞ。