マウス・ラットの行動解析ソフト 価格比較|EthoVision・ANY-maze・無料ツールの費用構造【2026年版】

ANY-mazeのフルライセンスは$7,995です。公式サイトに定価として掲載されています。1ドル162円なら、約130万円。

EthoVision XTは「$3,495から」。ただしモジュール制のため、必要な機能によって総額は変わります。

どちらも本国のサイトを見れば価格がわかります。しかし日本語で検索しても、まず出てきません。国内の代理店が価格を掲載していないためです。

この記事では、2026年7月時点で公開されている情報だけを使って、マウス・ラットの行動解析ソフトの費用構造を整理します。オープンフィールド試験や高架式十字迷路といった試験別に、どこまでの機能が必要になるかも合わせて整理しました。主要な数字にはすべて出典をリンクしています。

なお、この記事を掲載しているのはクラウド型行動解析ソフト「Be-Chase」の運営元です。後半に自社製品の説明がありますが、そこは明示して分けています。他社について書いた部分は、自社について書くときと同じ基準で扱いました。

本記事の価格はすべて2026年7月時点の公開情報に基づきます。為替は1ドル=162円で換算しています。実際の購入価格は、代理店・構成・時期・為替により変動します。


結論:主要ツールの価格一覧(2026年7月時点)

ツール提供形態価格価格の公開状況
ANY-maze買い切り(永久ライセンス)$7,995(約130万円)公式サイトに定価掲載
EthoVision XT買い切り+モジュール$3,495〜(約57万円〜)本国サイトに開始価格のみ
CleverSys TopScan / PhenoScan買い切り非公開代理店見積
SCANET MV-40装置+専用ソフト非公開代理店見積
行動解析君(Mr. Behavior)無料(コピーレフト)¥0
DeepLabCut無料(オープンソース)¥0
行動評価の受託サービス都度非公開個別見積
Be-Chase無料プラン/都度購入/期間契約¥0〜(有料は¥2,800〜)公式サイトに掲載

価格が公開されているものと、公開されていないものに分かれています。この違いから説明します。


なぜ日本語で価格情報が見つからないのか

海外製の行動解析ソフトの多くは、日本では代理店を通じて販売されています。

たとえばEthoVision XTを開発しているのはオランダのNoldus社で、日本ではソフィア・サイエンティフィックが取り扱っています。同社のサイトには、オープンフィールドやモリス水迷路といった試験別の詳しい解説や、モジュール構成の説明が日本語で丁寧に掲載されています。情報量は豊富です。

ただ、価格は書かれていません。代理店販売という仕組み上、構成・数量・時期で見積もりが変わるためです。隠しているわけではありません。

一方で、本国のサイトを見ると価格が書かれていることがあります

  • Noldusの公式サイトには、EthoVision XTについて「標準的な試験すべてに対応する構成で$3,495(USD)から」と記載されています(出典
  • ANY-mazeに至っては、公式の価格ページで全ライセンスの定価を公開しています

価格情報そのものは存在します。日本語で検索する限り、たどり着きにくいだけです。

価格をたどれない製品もある

一方で、本国サイトを見ても価格が出てこない製品群があります。冒頭の一覧に挙げたCleverSys(TopScan / PhenoScan)、神経科学系の装置一体型システムであるSCANET MV-40、そして行動評価そのものを外注する受託サービスは、いずれも個別見積が前提です。

こうした製品は、この記事では「金額を比べられないもの」として扱います。以降で価格を比較するのは、定価または開始価格が公開されているANY-mazeEthoVision XT、無料の行動解析君DeepLabCut、そして価格を公開しているBe-Chaseの5つです。


行動試験別に、どこまでの機能が必要か

価格を比べる前に、自分の実験に何が必要かを決めておくと判断が早くなります。行動解析ソフトの機能は、大きく3つの段階に分かれます。

第1段階:中心点の追跡とエリア判定
動物の重心(中心点)を1点として追い、アリーナ内のどの領域に何秒いたか、何回入ったか、総移動距離はいくつかを出す。もっとも基本的な機能です。

第2段階:身体部位の追跡
鼻先や尾の付け根といった部位を個別に追う。物体への接近方向や、体の伸展など、姿勢に関わる指標を取るために必要です。EthoVision XTでは、Noldusの公式技術仕様書によれば、ディープラーニング(畳み込みニューラルネットワーク)で鼻先と尾の付け根を検出する方式が用意されており、頭の向き(head direction)、体の伸展(body elongation)、特定のゾーンに頭が向いている時間(head directed to zone)といった指標が取得できます(出典)。

第3段階:外部機器の制御
ソフトから刺激装置やフィーダーを操作し、動物の行動に応じてリアルタイムに反応を返す。

主な行動試験を、この3段階に当てはめると次のようになります。

行動試験主な指標必要な段階
オープンフィールド試験(OFT)総移動距離、中心区画の滞在時間、壁際行動(thigmotaxis)第1段階
高架式十字迷路(EPM)open arm / closed arm の滞在時間・進入回数第1段階
明暗選択試験(明暗箱)明箱の滞在時間、移動回数第1段階
モリス水迷路(MWM)プラットフォーム到達時間、象限別滞在時間、遊泳距離第1段階
Y字迷路自発交替行動率、各アームへの進入第1段階
3チャンバー社会性試験(3 chamber social interaction test)各チャンバーの滞在時間第1段階(個体識別が必要なら第2段階)
恐怖条件付け(fear conditioning)フリーズ時間・回数解析は第1段階/条件付け装置の制御は第3段階
新規物体認識試験(NORT)物体への探索時間、探索回数第2段階(鼻先の追跡が望ましい)
ロータロッド落下までの時間装置側で計測(映像解析の対象外)
オペラント条件付けレバー押し回数、反応潜時第3段階

オープンフィールド試験、高架式十字迷路、明暗選択試験、モリス水迷路、Y字迷路。行動薬理や表現型スクリーニングで使われる試験の多くは、第1段階で成立します。逆に、新規物体認識試験のように鼻先の向きが結果を左右する試験や、オペラント条件付けのように装置制御が前提の試験では、第1段階のツールでは対応できません。

この整理を踏まえて、各ツールを順に見ていきます。


買い切り型の2大ツール

ANY-maze($7,995・全機能込み)

ANY-maze(開発・販売:米国Stoelting社)は、行動解析ソフトの中でも珍しく、価格をすべて公開しています。

ライセンス種別価格円換算(162円)
Full licence$7,995約130万円
I/O only licence$2,195約36万円
TakeNote licence$650約11万円
開発途上国向け年間ライセンス$950約15万円

Full licenceの設計は、率直に言って優れています。公式サイトによれば、モジュールやアドオンという概念がなく、単一価格ですべての機能が使える。さらに、ソフトウェアアップデートへの無制限アクセスと、期限のない技術サポートが含まれます。

あとから機能を足すために追加費用がかかることがない。買った時点で完結しています。購入判断がしやすい設計です。

なお、I/O only licence($2,195)は映像を扱わずセンサー入出力のみを使うもので、オペラント条件付け向けとされています。TakeNote licence($650)は、ライブまたは録画映像を見ながらキー操作で手動スコアリングするだけのライセンスです。いずれも用途が限定されるため、一般的な動画トラッキングを行うならFull licenceが必要になります。

また、開発途上国のラボ向けに年額$950の割引ライセンスが用意されており、その後に永久ライセンスを購入する場合は、支払済みの年間ライセンス分が割り引かれるとされています(日本は対象外です)。

EthoVision XT($3,495〜・モジュール制)

EthoVision XTは、この分野で最も広く使われているソフトのひとつです。Noldusの公式サイトには「標準的な試験すべてに対応する構成で$3,495から」と記載されています。約57万円です。

数字だけ見ると、ANY-mazeより安く見えます。しかし構造が違います。$3,495はあくまで開始価格で、ここに必要な機能を足していくと総額が変わります。

なお、Noldusの公式サイトのPricingはEssential / Advanced / Premiumという3つのパッケージに再編されており、いずれも価格は”Contact sales”(個別見積)となっています。Essentialは1匹・1アリーナの基本トラッキング、Advancedは複数個体・複数アリーナ、Premiumはソフトウェア3席とリモート研修込み、という区分です。以下で説明するモジュール構成は技術仕様書に基づくもので、機能の中身を理解するには有用ですが、実際の購入時にどのプランに含まれるかは見積もり時に確認してください。

EthoVisionは基本パッケージ(Base)に対して、必要な機能をモジュールとして追加していく設計です。これはNoldus自身の技術仕様書に明記されています。Baseは1つのアリーナで1匹の動物のテストを行うためのもので、そこに以下の8つのモジュールで機能を足していく、という構成です(出典)。

モジュール何ができるようになるか
Multiple Arenas複数アリーナを同時に追跡(最大100)
Social Interaction1つのアリーナ内で複数個体を追跡
Trial & Hardware Control行動に応じた外部機器の制御(第3段階)
Mouse / Rat Behavior Recognitionグルーミング、立ち上がりなど10種の行動を自動判定
External Data外部DAQで取得した生理データとの同期
Quality Assuranceユーザー権限管理、GLP対応
Track3D3次元での軌跡記録

このほか、鼻先・尾の付け根を追う機能はMultiple Body Points Moduleが担当します。自分の試験がBaseで足りるのか、どのモジュールが要るのか。この表と照らし合わせると、見積もり前におおよその見当がつきます。

ソフィア・サイエンティフィックの日本語解説も、基本バージョンは「一度に1つのアリーナで1匹の動物を追跡・分析する」ためのものだと説明しており、オープンフィールド・モリス水迷路・十字迷路といった一般的な試験には対応します。

では、フル構成にするといくらになるのか。

参考になる公開資料があります。ワシントン大学の学生技術料(Student Technology Fee)に提出された2019年の設備申請「Behavioral & Motion Tracking Studies」(病理学部門)は、全診断モジュールをアンロックしたEthoVision XTのUSBハードウェアキー2本の購入を目的として$66,233を申請し、同額で採択されています出典)。

ただし、この数字はそのまま一般化できません。読み取る際の注意点が3つあります。

  • 予算の内訳は公開されていないため、$66,233にキー以外の費目が含まれている可能性は否定できません
  • ゼブラフィッシュのコア施設向けの申請であり、げっ歯類だけを扱うラボとは必要なモジュール構成が異なります
  • 2019年の米ドル建て申請額です。現在の見積もりでも、日本での価格でもありません

それでも、「$3,495から」と「全モジュール」の間にはかなりの幅がありうる、ということは公開記録から読み取れます。

「〜から」と書いてあったら、自分の研究に必要な機能がBaseに入っているのか、モジュール追加になるのか。そこを確認してから見積もりを取ってください。


無料という選択肢

第1段階の機能に限れば、無料のツールで足ります。オープンフィールド試験や高架式十字迷路が研究の中心なら、まずここから検討して構いません。第2段階(身体部位の追跡)についても、無料の選択肢はあります。ただし性格がかなり違うので、順に見ます。

行動解析君(Mr. Behavior)

日本の研究室で行動解析のフリーソフトといえば、まず名前が挙がるのが行動解析君(Mr. Behavior)です。

Windowsで動くフリーソフトのパッケージで、4本のソフトが入っています。

Trackerは小動物のトラッキング。ROIを自由に設定でき、オープンフィールド、3チャンバー社会性試験、明暗選択テスト、高架式十字迷路、モリス水迷路に対応します。FreezeAnalyzerはフリージング(すくみ行動)の解析で、恐怖条件付け(fear conditioning)に使えます。BinTimerはキー押下の時間と回数を一定区間(Bin)ごとに区切って記録するもので、人の目によるスコアリングに便利です。AviRecorderは撮影用で、複数のUSBカメラから同時に録画できます。

開発者が慶應義塾大学医学研究科の大学院生時代とNorthwestern大学留学中に、自身の研究解析のために開発したものとされています。コピーレフトソフトウェアとして公開されており、使用・改変・再配布が可能です(成果を公表する際は謝辞が求められています)。Vectorからも入手できます。

オープンフィールド試験で総移動距離とゾーン滞在時間を出したい、というだけなら、これで十分に足ります。 研究費をかける必要はありません。

DeepLabCut

第2段階の姿勢推定を行うオープンソースツールとして、DeepLabCutも広く知られています。身体の部位を任意に定義して追跡できるため、既存ソフトでは取れない指標を作れます。新規物体認識試験の鼻先追跡のように、第1段階のツールでは届かない領域をカバーできるのが強みです。

ただし、Python環境の構築、GPU、学習データのアノテーション、モデル学習といった工程が必要です。ソフト自体は無料でも、習得と環境構築のコストは無料ではありません。研究室に対応できる人がいるかどうかで、評価が大きく変わります。

無料ツールで足りるかどうかの判断

次のすべてに当てはまるなら、まず無料ツールを試してください。

  • オープンフィールド試験、高架式十字迷路、明暗選択試験、モリス水迷路などの基本指標だけが必要
  • 研究室にWindows PCがある
  • 解析する動画の本数が限られている
  • 環境構築や多少の試行錯誤に時間を割ける

ここで足りなければ、有料ツールの検討に入ります。ただしその前に、買い切り型にも無料ツールにも共通する、価格表に載らないコストを確認しておきます。


価格表に載らないコスト

Windows PCとGPU

買い切り型のソフトも、行動解析君も、いずれもWindowsアプリケーションです。ソフト代とは別に、それを動かすPCが必要になります。

見落としやすいのがGPUです。Noldusが公開しているEthoVisionのセットアップ情報には、最小構成としてWindows 11 Professional(64bit)、Intel Core Ultra 7 265(20コア)、32GB RAM、NVIDIA RTX 4060、1TBの空き容量が挙げられています。ディープラーニングによる検出はCUDA 12.2に依存するため、GPUドライバがこれに対応している必要があるとも書かれています(出典)。

つまりソフト代とは別に、この水準のワークステーションを1台用意する費用がかかります。DeepLabCutも同様にGPUが要ります。

研究室の共用PCで動かすつもりが、結局PCごと買うことになった、という話は珍しくありません。

為替

ソフトウェアの価格自体は動きませんが、為替の変動によって円建ての支払額が動きます。ANY-maze Full licenceの$7,995を例に為替レートごとの円換算価格を見てみましょう。

為替レート$7,995の円換算
1ドル140円約112万円
1ドル150円約120万円
1ドル162円(2026年7月時点)約130万円
1ドル170円約136万円

10円動けば約8万円。予算申請から発注までに数ヶ月かかることを考えると、見積もり時点の金額がそのまま通る保証はありません。円建てのサービスにはない変数です。

時間と手間

見積依頼、予算申請、稟議、発注、納品、設置とライセンス認証。ここまでに数ヶ月かかります。年度をまたぐこともあります。「今週中にこの動画を解析したい」には応えられません。

導入した後も手間は残ります。USBキー(ドングル)方式なら、キーの管理そのものが業務です。紛失すれば使えない。PCを買い替えれば再認証。研究室のメンバーが増えれば、誰がいつ使うかの調整も要ります。


どの費目で買うか、という問題

日本の研究室では、価格そのものより手続きのほうが障害になることがあります。

130万円のソフトを買う場合、多くの機関では設備備品として扱われます。稟議、相見積、検収。年度内に執行を終える必要があり、年度末に予算が余っても発注が間に合わないことがあります。逆に、年度初めに130万円を確保できなければ、その年は導入自体を諦めることになります。

一方、数万円以下のクラウドサービス利用料であれば、消耗品費や役務費として処理できる可能性が高く、少額決裁の範囲に収まります。使いたいときに使い、使わない月は払わない。予算が読めない段階の研究テーマでも動けます。

ただし費目の扱いは機関ごとに異なります。クラウドサービスの利用料をどの費目に計上するか、年度をまたぐ契約が可能かどうかは、所属機関の事務担当に確認してください。ここは一般論では判断できません。


クラウド型という第三の選択肢

買い切り型と無料ツールを見てきました。3つめの選択肢が、クラウド型(SaaS)です。

改めて開示しておきます。この記事を掲載しているのはBe-Chaseの運営元で、以下は自社製品の説明です。そのつもりでお読みください。事実と数字は、他社について書いたときと同じ基準で扱います。

Be-Chaseは、Webブラウザだけで動作するクラウド型の行動解析ソフトです。インストールも専用装置も必要ありません。機能としては前述の第1段階、中心点の追跡とエリア判定が中心です。

このセクションでは、無料ツールとの違い、料金の考え方、撮影から解析までの流れ、取得できる指標、実際の価格を順に説明します。向かない用途は、その次のセクションにまとめました。

無料の行動解析君があるのに、なぜ有料なのか

先に、当然出てくる疑問に答えます。Be-Chaseがカバーするのは第1段階です。行動解析君も第1段階をカバーし、しかも無料です。

オープンフィールド試験の総移動距離とゾーン滞在時間を、研究室のWindows PCで、自分のペースで解析すればいい。それだけなら行動解析君で足ります。 その場合にBe-Chaseを勧める理由はありません。

Be-Chaseが引き受けているのは、解析アルゴリズムそのものではなく、その周辺の手間です。

  • 環境がいらない:Windows PCもインストールも不要。ブラウザだけで動きます
  • 撮った場所で解析できる:スマートフォンからそのままアップロードできます
  • 結果を共有できる:結果はURLで渡せるため、遠隔地の共同研究者が同じデータを見られます
  • データが取れた分だけ払う:後述の検出時間課金です

不利な点も書いておきます。行動解析君は手元のPCで動くので、解析する量に上限はありません。Be-Chaseにはプランごとに月間の解析時間の上限があります(後述)。動画を大量に持っていて時間だけはある、という状況なら、無料ツールのほうが素直です。

これらに価値を感じないなら、無料ツールが正解です。判断材料としてそう書いておきます。

「行動が検出された時間」だけに課金する(特許第7085257号)

従量課金のサービスは、通常アップロードした動画の長さで課金します。Be-Chaseの課金単位は、動画の長さではありません。

動画の中でターゲットを検出できた時間だけを、解析時間としてカウントします。1時間の動画でも、マウスを検出できたのが10分間であれば、課金対象はその10分だけです。追跡が外れた区間は解析時間に含まれません。この仕組みは特許第7085257号として登録されています。

データが得られなかった部分には課金されない、ということです。撮影に失敗した動画、対象が映っていない待機時間、照明条件が悪く追跡が外れた区間。そうした時間がコストから除外されます。

スマートフォンで撮って、そのままアップロード

インストール型のソフトでも、スマートフォンで撮った動画をPCにコピーすれば解析はできます。ファイル形式が合えば、そこに技術的な壁はありません。

違いは、解析する場所とタイミングの自由度です。

Be-Chaseはブラウザで動くため、撮影したデバイスからそのままアップロードできます。ソフトの入ったPCの前に行く必要がなく、解析用PCの空き時間を待つ必要もありません。

  • 既存の実験設備を変えずに始められる
  • 撮り溜めた過去の動画を、あとから解析できる
  • 出張先や自宅から結果を確認できる

大がかりな設備を持たない研究室や、撮影と解析の場所が離れている場合に効いてきます。

解析できる指標

Be-Chaseで取得できる主な指標は以下の通りです。いずれも第1段階、中心点の追跡から導かれる指標です。それぞれ詳しい解説記事があります。

結果は画像データ(PNG)とCSVで出力できます。

料金(2026年7月時点)

プラン月間の解析時間都度購入(税別)期間契約
Free20分¥0
Small60分¥10,000
Standard900分¥30,0006ヶ月 ¥150,000/年間 ¥240,000

ここでいう解析時間は、動画の長さではなく、前述の「検出できた時間」で数えます。1時間の動画をアップロードしても、マウスを検出できたのが10分間なら、消費するのは10分です。

枠は月単位で割り当てられます。都度購入した場合は、購入から1ヶ月間、そのプランの時間を使えます。

Freeプランは¥0で、クレジットカードの登録も不要です。月20分は、たとえば10分のオープンフィールド動画で全編マウスを検出できたとして、おおよそ2本分にあたります。機能を絞ってはいないので、分析そのものを試して判断できます。

Standardの月900分(15時間)を超える規模の利用については、上位プランを準備中です。現時点ではお問い合わせください。

公費・校費でのお支払いにも対応しています。費目の扱いや必要書類については、よくあるご質問、またはお問い合わせからご確認ください。


Be-Chaseが向かないケース

すべての研究にクラウド型が適しているわけではありません。以下に該当する場合は、EthoVision XTやANY-maze、あるいはDeepLabCutを選ぶべきです。

身体部位の追跡が必要な実験(第2段階)

Be-Chaseは中心点の追跡が中心です。鼻先や尾の付け根を個別に追う機能はありません。新規物体認識試験のように鼻先の向きが結果を左右する試験や、体を伸ばして周囲をうかがう姿勢(stretch-attend posture)のような、体の伸展や頭の向きを見る指標が必要な試験には向きません。この領域はEthoVision XT、またはDeepLabCutの守備範囲です。

リアルタイム追跡が必要な実験

Be-Chaseは動画をアップロードして解析する方式です。動物の行動をその場で追跡し、それに応じて何かを起こす、という使い方はできません。

機器の制御が必要な実験(第3段階)

恐怖条件付け、オペラント条件付け、光遺伝学の刺激制御、ペレットディスペンサーやシェイパーの操作など、ソフトから外部機器を制御する必要がある実験には対応していません。ANY-mazeやEthoVision XTは、こうした機器連携を前提に設計されています。

なお、恐怖条件付けについては、装置制御はできませんが、撮影済みの動画からフリージングを解析することは可能です。条件付けを別装置で実施し、映像だけをBe-Chaseに渡す使い方であれば成立します。

電気生理データとの同期

脳波や神経活動データと行動データをタイムスタンプで同期させる、といった用途には対応していません。

インターネットに接続できない環境

クラウドサービスである以上、ネットワークが前提です。

これらが必要な研究では、買い切り型のソフト、またはDeepLabCutが正しい選択です。


年間の解析時間で、どれが得かは変わる

ここまでの前提を確認しておきます。第1段階の基本指標だけなら、行動解析君が¥0でカバーします。それでも有料ツールを検討するのは、機能が足りないか、環境や運用の都合が合わないときです。

そのうえで、有料ツール同士の比較をします。ANY-maze Full licence(約130万円)を基準に、Be-Chaseとの損益分岐を計算してみます。

利用パターン年間の解析時間Be-Chaseの年間費用ANY-mazeと並ぶまで
年6回程度の単発利用(Small ¥2,800 × 6)最大360分(6時間)¥16,800約77年
本格的な日常利用(Standard 年間プラン)最大10,800分(180時間)¥240,000約5.4年

毎月まとまった量を解析して5年以上使い続けるなら、買い切り型のほうが総額は安くなります(PCの費用を別にして)。

ただし、この比較は条件が同じ前提ではありません。ANY-mazeは第1〜第3段階をすべて含む価格で、しかも買ってしまえば解析する量に上限はありません。Be-Chaseは第1段階に絞られており、月ごとの解析時間に上限があります。第1段階しか使わないなら、130万円のうち使わない機能にも払っていることになります。逆に第3段階が必要なら、Be-Chaseはいくら安くても選択肢に入りません。金額だけを並べても答えは出ません。

そのうえで、次のような研究室ではクラウド型が有利です。

  • 年に数回、卒論・修論の時期だけ集中的に使う
  • 研究テーマが変わる可能性があり、5年先の利用が読めない
  • まず1本の論文のためにデータが必要
  • 130万円の予算をいま確保できない

どちらが正しいということはありません。自分の研究室の年間解析時間と、必要な機能の段階で判断してください。


どう選ぶか

判断の軸を整理します。

まず無料ツールを試す

標準的な試験の基本指標だけなら、行動解析君で足ります。Windows PCがあるなら、まずここから始めてコストをかけない選択は合理的です。

身体部位の追跡が必要で、技術的に対応できるなら、DeepLabCut

新規物体認識試験の鼻先追跡など、第2段階が必要な場合。ソフトは無料ですが、環境構築と学習の工数を払える研究室に限られます。

機器制御・リアルタイム追跡が必要なら、買い切り型

EthoVision XTかANY-maze。この用途に代替はありません。ANY-mazeは定価が公開されており全機能込みなので、必要な機能が明確なら判断しやすい。EthoVisionはモジュール構成を確認したうえで見積もりを取ることになります。

動画を撮ってから解析する使い方で、頻度が読めないなら、クラウド型

Be-Chaseのようなクラウド型は、初期投資が小さく、使った分だけの支払いになります。スマートフォンで撮った動画をそのまま解析できるため、既存設備を変える必要もありません。

迷ったら、試してから決める

ANY-mazeは公式サイトからソフト本体を無料でダウンロードでき、30日間の試用ライセンスを申請できます。EthoVision XTも公式サイトから無料トライアルを申し込めます(出典)。Be-Chaseにも無料プランがあります。カタログを読むより、自分の動画を1本流してみるほうが早く判断できます。


まとめ

  • ANY-mazeは公式サイトで$7,995(約130万円)を公開している。モジュールなし・全機能込みで、アップデートと技術サポートが期限なしで付く
  • EthoVision XTは本国サイトに$3,495〜(約57万円〜)と記載があるが、モジュール制。フル構成では総額が大きく変わりうる(公開されている2019年の米国調達記録では、全モジュール込みのUSBキー2本で$66,233という例がある)
  • 日本の代理店は価格を公開していない。これは仕組み上の制約であり、本国サイトには載っていることがある
  • CleverSysやSCANET、受託サービスは価格が非公開で、金額の比較対象にできない
  • 買い切り型にはWindows PC、GPU、為替、リードタイムという価格表に載らないコストがある
  • 標準的な試験の基本指標だけなら、行動解析君などの無料ツールで足りる。鼻先の追跡が必要ならDeepLabCutという無料の選択肢もあるが、環境構築の工数がかかる
  • クラウド型(Be-Chase)は初期投資が小さく、撮影から解析までのワークフローが変わる。ただし身体部位の追跡、リアルタイム追跡、機器制御には対応しない
  • オープンフィールド試験、高架式十字迷路、明暗選択試験、モリス水迷路、Y字迷路は、中心点の追跡とエリア判定で足りる。新規物体認識試験は鼻先の追跡が望ましく、オペラント条件付けは装置制御が必要
  • 価格そのものより、費目と年度執行のほうが障害になることがある
  • 年間の解析時間と必要な機能の段階によって、どれが得かは変わる。5年以上・大量に使うなら買い切り型が安い

行動解析ソフトに唯一の正解はありません。試験の種類、解析する動画の量、予算のかたち、研究室の環境によって、適した選択は変わります。

それでも、価格がわからないまま比較検討を始めるのは、研究者にとって負担が大きすぎると考えています。公開されている情報だけでもここまで整理できるということを示したくて、この記事を書きました。

抜けている製品、古くなった数字、事実と異なる記述があれば、お問い合わせからご指摘ください。確認のうえ追記・修正します。


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Be-Chaseは、マウス・ラットをはじめとする実験動物の行動を、動画から自動でトラッキング・解析するクラウド型の行動解析ソフトです。インストールも専用装置も不要で、Webブラウザだけで使えます。

Freeプランでは、クレジットカードの登録なしで分析機能をお試しいただけます。営業のご連絡もいたしません。

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ご不明な点はよくあるご質問、またはお問い合わせからどうぞ。


本記事の価格情報は2026年7月時点で各社が公開している情報に基づきます。為替は1ドル=162円で換算しました。実際の購入価格は構成・時期・為替・代理店により異なります。最新の価格は各社の公式サイトでご確認ください。